まず知りたい結論 制汗剤はよくないのかを冷静に判断するポイント
制汗剤がよくないと言われる理由は、悩んでいる原因に合っていない製品を使用したり、正しい利用方法ではなかったりするからです。
この章では、悩み別におすすめの制汗剤や、よくないと言われる理由、対策について解説するので参考にしてください。
いま困っているのは汗かにおいかを分けて考える
制汗剤を使うべきか悩んでいる原因が「汗をかく」なのか「ワキガ(腋臭症)などのにおい」なのかで利用する製品が変わります。
汗をかくことによるシャツなどの汗じみが気になるのであれば制汗剤を塗布しておくと、発汗の量を軽減できます。一方で汗による臭いやワキガが気になるのであれば、殺菌作用のあるものや、臭いを抑制してくれるものを使用するとにおいを軽減可能です。しかし、ワキガの場合、根本的な解決はできないことを理解しておくといいでしょう。
このように、「汗の悩み」と一口に言っても、「汗の量」なのか「臭い」なのか、自分を悩ませているものは異なるため、それぞれの悩みに合った製品を選択することが「制汗剤はよくない」と言われる誤解を解決する糸口になります。
成分については、後半で解説しています。
制汗剤はよくないと言われる理由と実際のリスクの違い
制汗剤がよくないと言われる主な理由は、以下のとおりです。
- 制汗剤を使うとワキガになる
- 汗をかかなくなるため体の熱を逃がせなくなる
- アルミニウムにより認知症や乳がんの発生リスクが高くなる
これらはよく耳にする噂ですが、制汗剤によりワキガになることはありません。また、制汗剤の使用で一部に汗をかかなくなったとしても、腕や足など他の部位から汗をかき、体温の上昇を予防できるため問題ありません。さらに、制汗剤に含まれているアルミニウムによる認知症や乳がん発症リスクは論文により否定されています。詳しくは次の章で解説していきます。
制汗剤使用による実際のリスクには、下記があります。
- 制汗剤の使用によりにおいがキツくなる
- 皮膚トラブルやアレルギーを発症する可能性がある
制汗剤の使用頻度が高くなると、毛穴をふさいで炎症を起こしてしまい、ニキビや毛嚢炎などの肌トラブルが起こります。また、殺菌成分のある制汗剤を使い過ぎると、常在菌を減らして免疫力が低下し、においを発生させるケースがあります。また、免疫力が低下すると皮膚にカビが発生して、かゆくなったり赤くなったりもします。しかし、制汗剤の使用頻度を守れば、トラブルを起こす可能性は低いため安心してください。
この他にもアレルギー発症リスクがあります。アレルギー発症のリスクは誰にでもあるため、使用前に腕や足の一部で使用して赤くなったり、かゆくなったりしないか確認しましょう。
成分の見方 アルミニウムや香料など気になる項目をやさしく整理
「制汗剤に含まれるアルミニウムや香料が体に悪影響ではないか」と気になる方もいるでしょう。この章では、制汗剤に含まれる成分の見方や気をつけるべきポイントを解説します。
アルミニウムは危険かに答えるヒント
制汗剤に含まれているアルミニウムにより「アルツハイマー型認知症を発症するリスクが高くなる」という噂を聞いて不安な方もいるでしょう。しかし、アルミニウムが含まれているクリームの塗布により、認知症の発症リスクが上がったという報告はないため、安心してください。
しかし、肌状態によってはアルミニウムを使用することで、アレルギーや皮膚のかぶれが起こる可能性があります。脇に塗った後にかゆくなったり、赤くなったりしたときはすぐに使用を中止し、医師に相談するようにしましょう。
香料とアルコール ― 香り配慮と刺激のバランス
制汗剤には汗の臭いを紛らわせるため香料が含まれているものや、殺菌作用を求めてアルコールが含まれているものなどがあります。
汗の臭いが気になるからと香りの強い制汗剤を使用してしまうのは逆効果です。制汗剤はできるだけ無香料のものを使用しましょう。制汗剤は汗をかく前に使用しますが、スポーツの後に使用するケースもあるでしょう。香りがある制汗剤を使うと、汗と混じり臭いを強めてしまう可能性があるのです。臭いが強くなると、学校や職場で周囲に悪い印象を与えてしまうかもしれません。
また、敏感肌の方は、制汗剤の成分にアルコール(エタノール)やメントールが含まれていないかチェックしましょう。アルコールが含まれていると、使用後に清涼感がありますが、乾燥しやすく肌に刺激となり、皮膚トラブルを起こしやすくなります。アルコールフリーの制汗剤を使用すると、皮膚への刺激や肌の乾燥を予防できますし、もしも清潔感が気になるのであればこまめに汗を拭きとるなどして対応が可能です。
乾燥が気になる方は、ヒアルロン酸やセラミドなど保湿成分も入っているものを選ぶとよいでしょう。
成分表示の見方と避けたい時の目安
どの制汗剤を使おうか迷ったときは、パッケージの成分表示を確認しましょう。制汗剤は化粧品に分類されており、多く含まれている成分から順番に表示されています。
記載されている成分に下記があれば、制汗作用・殺菌作用に期待できます。
| 制汗成分 | 殺菌成分 |
|---|
・塩化アルミニウム ・クロルヒドロキシアルミニウム ・パラフェノールスルホン酸亜鉛 ・硝酸アルミニウムカリウム(ミョウバン) | ・ベンザルコニウム塩化物 ・イソプロピルメチルフェノール ・βーグリチルレチン酸 |
アルコールが含まれている製品の使用で赤くなった経験があるなど、特定の成分を避けたい場合は、含まれていないか成分表を確認しましょう。
肌に合うかわからないときは、二の腕やひじなどの内側のやわらかい部分で皮膚トラブルが起きないかパッチテストで確認してみてください。
制汗剤の副作用と対策 肌トラブルを防ぐ使い方
制汗剤を使用するときに起こりやすい副作用・肌トラブルには下記があります。
この章では、それぞれの対策を解説します。
白残りや黄ばみの原因とシャツを守るコツ
先ほども解説したように制汗剤には、塩化アルミニウムやクロルヒドロキシアルミニウムなどが含まれています。このような制汗剤に含まれている成分は皮脂や汗と混ざり、洋服の繊維に染みこむと白残りや黄ばみの原因となるのです。
シャツを白残り黄ばみから守るには、下記の方法を取り入れてみてください。
- 脇に汗取りパットを使用する
- パットを使用しない場合はこまめに汗を拭く
- 制汗剤を塗布して着た衣服はすぐに洗濯する
- 起床後にシャワーを浴びて脇をしっかりと乾かしてから制汗剤を使用する
汗をこまめに拭いたり、着たものをすぐに洗濯したりすると、洋服の黄ばみや白残りを軽減できるでしょう。
肌がかゆくなる時の見直し ― 使いすぎと摩擦を減らす工夫
制汗剤を塗布して肌がかゆくなるときには、下記が原因かもしれません。
- 制汗剤を使い過ぎている
- 制汗剤の成分が合っていない
- 制汗剤が十分に除去できていない
- 肌と衣服の摩擦が起きている
制汗剤は汗の量にもよりますが、朝に使用すると夕方まで効果に期待できます。そのため、少量の汗で制汗剤を塗り直したり、汗を拭かずに使用したりすると肌がかゆくなる原因になります。使った後や塗り直すときは、入浴や汗拭きシートで制汗剤をしっかりと除去するようにしましょう。
また、肌と洋服が擦れてかゆくなる場合は、素材を綿やリネンにしたり、次に解説する保湿を意識したりすると、摩擦の軽減に期待できます。
入浴後と就寝前の保湿で土台を整える
制汗剤を塗布した後の皮膚は、刺激によりダメージを受けているため、入浴後や就寝前の保湿を忘れないことが、肌を健やかに保つ秘訣です。
人の皮膚は、入浴で体を洗った際に皮脂や保湿成分が洗い流されてしまい、バリア機能が低下して、肌の水分が蒸発しやすい状態です。入浴後に肌の水分量は一時的に上昇しますが、その水分を閉じこめる役割である皮脂が減少した状態であるため、肌表面の水分の蒸発とともに角質層の水分も失ってしまうのです。お風呂から上がって保湿ケアをしなかった場合、角質層の水分が減少し30分後には入浴前より乾燥しているといった報告もあります。乾燥した肌は摩擦などの外的刺激を受けやすくなってしまうため、痒みが起きやすくなるのです。
また、就寝前の保湿も肌トラブルの予防に重要です。人は睡眠中に約350mlの発汗があると言われています。寝ている間の発汗でも肌は乾燥してしまい、さらに寝返りなどの摩擦によりかゆみが発生する原因になります。
このように、制汗剤を使用中に肌トラブルを起こさないためには、入浴後や就寝前の保湿を心がけ、肌を土台から整えておくことも大事になります。
制汗剤以外の選択肢 香り配慮と生活でできる工夫
汗を抑えるための対策は制汗剤以外にも、ウェットシートの使用や日々の生活の中での工夫など様々です。においが気になる方は、制汗剤ではなくデオドラントを選んでもよいでしょう。
この章では、制汗剤以外で気になる脇の悩みを解決するための方法を解説します。
無香料デオドラントとウェットシートの正しい使い方
汗をかいた後のにおいが気になる方は、制汗剤ではなくデオドラントを使ってみてください。デオドラントは、においを軽減する役割があり、汗を抑えるようにする制汗剤とは異なります。そのため、デオドラントは汗をかく前の清潔な肌に使用してください。また、香りは無香料を選んでおくと、汗や皮脂と混ざって不快なにおいにならないため安心です。
デオドラントや制汗剤を使用中に汗をかいたときは、ウェットシートを使いましょう。ウェットシートは、汗を拭いて体をさっぱりとさせる役割があります。肌への負担を軽減するなら、アルコールフリーのものが安心です。
脇の悩みもひとつではないため、悩みに合った製品を選択するようにしましょう。
シーン別の汗とにおい管理プラン(通勤・会議前・帰宅後)
通勤時・会議前・帰宅後のシーン別に汗とにおいを管理するための方法を解説していきます。
| 通勤時 | 会議前 | 帰宅後 |
|---|
・制汗剤やデオドラントを塗布 ・インナーは吸収性・速乾性のある綿やリネン素材を選ぶ ・ネッククーラーを使って体温の上昇を軽減する | 会議前に無香料の汗拭きシートで臭いを軽減し好印象を与える | ・シャワーを浴びて毛穴詰まりを予防する ・肌をしっかりと保湿する ・洗濯をして繊維に汗やにおいの染み込みを軽減する |
日々の生活を見直すと、汗によるにおいを軽減できる可能性があるため、取り組んでみてください。
緊張汗に強くなる ― その場でできる落ち着く工夫と環境づくり
暑さで汗をかくことは多くの方が経験していると思いますが、実は緊張したときも汗をかくんです。緊張して汗をかくのは、交感神経が優位になっているからです。その場で副交感神経を優位にする工夫に、深呼吸があります。深呼吸を繰り返すと、緊張がほぐされてリラックスできるでしょう。緊張したときにじんわりと汗を感じる場合は、まずリラックス法を取り入れてみましょう。
他には、冷却シートを活用したり、冷たいペットボトルを首や脇に当てたりすると、涼しく感じられて、緊張をやわらげる効果に期待できます。
通勤時に不安や緊張を感じる場合は、音楽を聴いたり、気持ちが落ち着く紅茶を出勤前に飲んだりするなど自分のルーティンを決めると、リラックスできるかもしれません。
緊張汗が気になる方は、普段の食生活で辛み・酸味のある食べ物やカフェインの摂取を控えるのもひとつの手段です。辛みやカフェインの過剰な摂取は、緊張しやすくなり汗をかきやすくなってしまうのです。
「緊張したときに汗をかく気がする」と感じる方は、自分い合った方法を試してみるのもおすすめです。
医療での脇汗治療 ボトックス注射という選択肢
制汗剤やデオドラントを毎回使うのは面倒、使ってもなかなか汗が治まらない、肌に優しい脇汗対策を行いたいという方は、クリニックでボトックス注射を受けるとよいかもしれません。
この章では、ボトックス注射による汗の軽減効果や制汗剤との違いについて解説するので、参考にしてください。
ボトックス注射でできることと持続期間
ボトックス注射で期待できる効果は、下記があります。
- 汗の分泌を減らす
- 汗が減るためにおいの軽減に期待できる
- 洋服の汗染みや制汗剤使用による黄ばみが気にならなくなる
ボトックス注射をすると、発汗を促す信号を抑制するため、注射部位の汗をかく量が減ります。
汗をかく量が少なくなれば、皮脂と混ざる量も少なくなるため、においの軽減も期待できるのです。
また、汗によるシャツの染みもボトックス注射前と比較してできにくくなるため、濡れていないか気にせず過ごせる点も嬉しいですね。
ボトックス注射は、1回の施術で約4〜6ヶ月効果が続きます。
制汗剤との違い ― 即効性か長期的なケアか
ボトックス注射と制汗剤の主な違いは、効果を感じる期間です。
制汗剤は即効性がありますが、効果が続く期間は半日〜1日で毎日塗る必要があります。また、根本的な解決にはならないため、制汗剤の使用を続けたとしても汗の量が減ることはありません。
一方でボトックスは、汗の分泌を抑制する効果が施術後2〜3日から感じられ、約1ヶ月で最も効果が強くなります。その後約半年効果が続くことが多く、制汗剤を使用しなくても快適に過ごせる点が魅力です。
年々暑くなっているため、快適に過ごしたい方はボトックス注射を検討してみてください。
医師に相談する前に知っておきたいリスクと費用感
ボトックス注射には良い面もありますが、施術後に下記のリスクがあります。
通常、10日前後で症状は改善します。改善しないときには、椿クリニックで無料の診察などのアフターフォローを受けられるため、安心してください。
椿クリニックで多汗症に使用するボトックスの費用は、以下のとおりです。
| ボトックス製剤 | 投与量 | 費用 |
|---|
| ボトックスビスタ | 100単位 | ¥86,900 |
| 150単位 | ¥132,000 |
| 200単位 | ¥170,500 |
| 韓国製ボツリヌストキシン | 100単位 | ¥31,900 |
| 150単位 | ¥47,300 |
| 200単位 | ¥61,600 |
ボトックスビスタと韓国製のボツリヌストキシン製剤に大きな違いはなく、ボトックスビスタのジェネリック的な位置にあるのが韓国製のボツリヌストキシン製剤という説明が多く聞かれます。
ボトックスビスタと韓国製ボツリヌストキシン製剤の大きな違いは、厚生労働省の承認を受けているかどうかという点です。韓国製ボツリヌストキシン製剤は日本での承認は受けていませんが、韓国の食品医薬品安全処(MFDS)の承認は受けているため、安全性は確保されています。そのため、より安全性を求める場合はボトックスビスタ、費用を安く済ませたい方は韓国製のボツリヌストキシン製剤を選ぶとよいでしょう。
ボトックスの違いや効果など気になることがあれば、無料カウンセリングで納得いただけるまで説明いたします。
食品医薬品安全処(しょくひんいやくひんあんぜんしょ、略称: 食薬処、英語:Ministry of Food and Drug Safety、MFDS)は、安全な食品及び医薬品体系の構築・運営を通じて、関連産業の競争力向上という国民の期待に応じる為に設立された、大韓民国における国家行政機関。
引用:Wikipedia 食品医薬品安全処(MFDS)
まとめ
制汗剤がよくないと言われている原因には、使用頻度の高さによる肌トラブルや、汗や皮脂と混ざり、白のこりや黄ばみができることなどがあります。
制汗剤に含まれる成分は安全性が高く、認知症の発症リスクにはつながっていないため安心してください。
制汗剤は使用方法や肌のお手入れを適切におこなえば、毛穴の詰まりや乾燥を予防しながら使えます。しかし、毎日塗る手間が必要で、できるだけ手間を省きたい、根本から脇汗を改善したい場合はボトックス注射がおすすめです。
一度の施術で約半年効果が続くため、汗によるにおいや汗染みが気になる方は、ボトックス注射を検討してみてください。
椿クリニックは銀座・大阪・名古屋にあり、患者様に安心して施術を受けられると好評のクリニックです。ボトックス注射を検討している方は、お気軽にお問い合わせください。